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有閑マダム相手に、せっせせっせと1丁100円にも満たない豆腐を売る日々の唯一の楽しみは、毎日買いに来てくれる奈宮家の若奥さんの笑顔です。
「いつものお豆腐くださいな」
「い、いらっしゃいませ ///」
「こちらの絹ごし豆腐は、滑らかでコクがあって美味しいのよね」
――奥さんの肌の方が、私の豆腐よりずっと滑らかで美しいですっ―― と、昌也が叫びそうになるのを堪えると、その代わりとでも言うように、水槽の中から掬い上げたばかりの豆腐が手の上でふるふると震えた。
「あと、今日はお揚げも2枚頂くわ」
「は、はい。 毎度ありがとうございます」
代金を支払い、帰ろうとしていた若奥さんが不意に顔を上げた。
「あら、これは……」
袋の中には、頼んだ物以外にがんもどきも入っている。
「それは、その…… いつも来て頂いているお礼、です」
「まぁ、ありがとう。 でも、どうやってお料理したらいいかしら?」
「う、薄口醤油で含め煮にしたりとか」
「美味しそうね! 今晩、さっそく作ってみるわ。 お豆腐屋さん、お料理も上手なのね」
「……///」
「そうだわv 今度うちに来て教えて下さらないかしら? 卯の花のお料理の仕方がわからないのよ。 お暇なときに、ね?」
「おっ……奥さんのお宅にっ……?!」
<つづきません>
官能豆腐屋じゃなくて、官能若奥さんが純朴豆腐屋を誘惑する話になってしまった。orz
それにしても、米屋本欲しぃ
その家は静かで、とても居心地が良かった。
私はいつも部屋を散らかしてしまうのだけれど、クロウが元通りに片付けてくれる。
だから、家の中は常に美しく保たれていた。
晴れた朝、起きるとすぐに窓を開け、清浄な空気を肺の隅々にまで取り込む。
世界は幾重にも重なり合ってそこに在り、クロウと私は並んでそれを見る。
在るべき物を在る場所へ。
私たちの仕事は真砂の数、満天の星の数だけあった。
在るべき物を在る場所へ。
雨の降る日、クロウがチョコレート菓子を焼き、紅茶を淹れる。
私は紅茶にブランデーを落とす。
彼がそれに対して何か言っても、私は聞こえない振りをする。
そして意地悪く「陰険眼鏡」と呟く。
彼は笑う。
私はあの時、もっと素直になるべきだった。
その家の庭先からは、成層圏が蒼く弧を描いているのが見えた。
クロウはそこで本を読むのが好きだった。
本を読んでいるクロウの隣で、私はいつも暇を持て余してしまう。
しかしその日は、私のスカートの右膝に蝶がとまった。
クロウはじっとしているように言い、それに優しく指を伸ばす。
「捕まえてはだめよ」と言いながら、私は彼に捕らえられたいと望んでいた。
全く愚かしい考えだ。
私たちには為さねばならない仕事がある。
彼は私の名を「ユーコ」などと、いい加減に伸ばしたりはしなかった。
勿論、「ユ・ウ・コ」と一字一字、四角四面に区切るような無粋な呼び方もしない。
彼の優雅な発音のお陰で、私はこの名前を嫌いにならずに済んだ。
――侑子
もう一度、呼んで欲しい。
叶わぬ願いと知りながら、私は彼を懐かしむ。
fin.
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侑子さん独り。 だけどクロウ×侑子。
初書きは難しいっっ! せめて『ソエルとラーグ』を読んでからにするべきだったかしら? でも、rarararaさんが日記でクロウさんと侑子さんを描いてらっしゃるのを見て、私も何か書いてみたくなってしまったのですよ。
身の程知らずって、こーゆーのを指すんですね。